Vol.57
「2番目は寧紅工夫茶」
紅茶:寧紅工夫茶 安徽省修水県
外形:焦茶の細長い鍵状、少し金毫がある。
湯色:深いオレンジ色。
香気:カラメルの甘い香り。
滋味:深みのあるまろやかな甘さ。
寧紅工夫茶は中国紅茶の中で二番目に歴史の古い紅茶です。清代道光年間(1823-1850)初期に製造が始まったとありますからおよそ200年前になります。修水市でお茶の栽培が始まったのは唐代と記録がありますから1000年以上の茶産地ですが当初は緑茶を作っていました。
隣の福建省で紅茶が誕生したのが1600年代の正山小種でここから紅茶の歴史が始まり、次に紅茶の産地となったのが修水県でした。そして19世紀後半に安徽省の祁门红茶(2020年11月号の茶遊記に寄稿)の順番になるそうです。安徽省は福建省から紅茶加工を学んでいます。
茶名に工夫とつく紅茶を10月号から研究してますが、寧紅工夫茶はあまり飲んだことがありませんでした。しかし、思っていたよりとても美味しい紅茶でした。茶湯も茶香も昔から慣れ親しんだイエローラベルのリプトン紅茶を彷彿させます。思わず檸檬やミルクを入れて飲みたくなる滋味でした。これまで、いろいろな中国茶葉を飲んできましたが人生で一番最初に飲んだのはたぶんリプトン紅茶です。あの味と香りこそ「THE 紅茶」として私の味覚に記憶されているのですごく懐かしい味でもありました。
アメリカにリプトン紅茶が設立されたのは1892年です。寧紅工夫茶の生産が一番盛んな時期と重なります。記録によると、当時一年間に30万箱が輸出されたうち24万箱は修水が占めていたそうです。この輸出量がアメリカだったのか、別の国だったのかは不明です。
現在、人件費の高騰に押されて寧紅工夫茶は生産農家も減少。伝統的な加工技術も消えつつあるそうです。