茶遊記

中国茶の物語と評茶、茶館情報のブログ。

茶遊記Vol.58 2023年1月号「工夫して作られた政和工夫紅茶」

「工夫して作られた政和工夫紅茶」

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紅茶:政和工夫紅茶 福建省政和県

外形:黒い自然にくねりのある棒状。

湯色:赤みのあるオレンジ色

香気:薬、焙煎香

滋味:酸味、甘味、苦味がある。

 

 政和県錦屏村がこの紅茶の産地です。1874年(同治13年)遂应场村(現在の錦屏村)で高山茶葉を紅茶にしたのが始まり。加工に手間がかかるので“工夫”をつけ“遂应場仙岩茶工夫茶”という茶名にしました。

 政和地域の茶樹栽培は唐代末に先住民が種を植えたことに始まると伝わります。当時はまだ紅茶は作られていません。およそ19世紀中頃、白茶にする大白種の茶葉を使い、闽北・武夷山の正山小種の加工法を参考に改良をして誕生した紅茶です。

 政和工夫茶は坦洋工夫茶、白琳工夫茶と並んで闽红三大紅茶工夫茶と呼ばれますが、この中で一番個性的な外形は武夷岩茶のような黒いくねりのある棒状。香りも花や果物というよりは薬の香りに似ています。滋味は全体的に紅茶の甘さより白茶の苦味を残した味わいでどこかウーロン茶のようです。19世紀、英国、フランス、ロシアなどに輸出し人気を博しました。

 「茶」は福建の名刺。と喩えられるように福建省は闽北と闽南で競うように数々の銘茶を生産しています。17世紀にオランダ東インド会社が正山小種を輸入して以来、瞬く間にヨーロッパの人々の生活に浸透し新しい喫茶文化が誕生しました。正山小種や政和工夫紅茶は東洋的な香りとして人気があったのかもしれません。