茶遊記

中国茶の物語と評茶、茶館情報のブログ。

茶遊記Vol.56 2022年11月「白琳工夫茶のキリッ」

Vol.56

   「白琳工夫茶のキリッ」

 

   

 

紅茶:白琳工夫茶 福建省福鼎市

外形:細い鍵状、焦げ茶色の茶の霜降り。

湯色:橙紅。

香気:焦糖香、甘くまろやかなフルーツの香り。

滋味:微かな渋みと苦味に酸味が加わっている。

 

 白琳工夫は清代末期の1900年前後から福建省福鼎市で製造されている紅茶です。福鼎市は言わずと知れた白茶で有名な産地ですので、この白琳工夫も白茶と同じ原料の大白種という茶葉から作られています。そのせいか、紅茶の甘さより烏龍茶のようなすっきりした味わいです。

 福建省で白茶を生産している茶友にきいてみると、以前は大白、大毫などいい品質の白琳工夫茶を生産していましたが、最近はいろいろな茶葉が使われ白琳工夫茶として売られているそうです。しかし現在、大白種などいい品質の葉はすべて白茶に加工されるそうです。

 工夫茶という茶葉や茶芸がここ数年流行しています。工夫茶とは何でしょうか。「工夫」という語彙は日本語でもよく使いますが、「工夫」は中国語でGongーFuと発音し、その意味は手間ヒマかけること、時間がかかることを表現します。日本語の使われ方と微妙に違います。

 紅茶は100%発酵させなければならず、湿度と気温の条件が揃ってはじめて茶葉に変化が起きます。そのため時間もかかり、無発酵の緑茶よりその工程に手間がかかります。発酵しすぎても美味しくないし、発酵が浅いのは茶湯や香気がよく出ません。そう考えると手間ヒマがかかっています。

 白琳工夫茶もこのように工夫してつくられた茶葉ですが、紅茶と思って飲むと以外にもきりっとした辛口な滋味です。どこかうっすらと白茶の面影を残した味わいともいえます。