茶遊記

中国茶の物語と評茶、茶館情報のブログ。

茶遊記Vol.52 2022年07月

茶遊記Vol.52

 

          「鳩坑茶の洋庄茶」

 

緑 茶:鳩坑茶 浙江省淳安県(千島湖)

外 形:灰緑色、短い縮れ状

湯 色:杏黄

香 気:薬や煙のような香り。

滋 味:濃厚な苦味と甘み。低温80度ぐらいの湯で淹れる。

 

 鳩坑茶は鳩坑毛尖とよばれることもありますが古くは「睦州鳩坑」と呼んで淳安県鳩坑源が産地です。千島湖に行ったのは今から20年前のことで当時は手の加えられてない大自然がいっぱいでした。最近は観光人気にあやかって自然を生かした開発が進み杭州からも近いので人気のようです。

 この辺りは安徽省の皖南地区に繋がり、いい茶葉が育つと云われ、杭州、平水、温州と並んで浙江四大茶区と呼ばれています。唐の詩人・李白はこの地域を≪清渓行≫で詠んでいます。

 洋庄茶というのは19世紀半ばに海外に輸出した茶葉を総括してこう呼びます。鳩坑茶は清明節前後に摘んだ葉を毛尖と呼び、谷雨前後に摘んだ葉は雨前茶と呼びますが両方とも国内で消費されました。他に、遂緑で眉状に加工した珍眉緑茶と呼ばれる茶葉を輸出していました。清朝末頃、淳安県にしにある咸坪镇には有名な茶葉市場があり、茶の取引でいつも賑わっていたそうです。

 今回入手したのも現代の洋庄茶といえるかもしれません。淳安の茶葉会社の方によれば、このタイプは毛尖と呼んで国内販売よりも海外からの注文に合わせて加工するそうです。鳩坑茶といっても加工の違いで数種のタイプがあるということです。評茶したら苦味の強い薬のような緑茶でしたが、熱い夏にこれを飲むと心身ともにスッキリし、緑茶のもつ寒性の性質が体をほどよく冷やしてくれます。中国では揚げ物を食べると「上火」といいますからこういう寒性の茶と合わせると調和がとれるわけです。医食同源の原理ですね。この茶葉の主な輸出先が東南アジアときいて納得です。