茶遊記

中国茶の物語と評茶、茶館情報のブログ。

茶遊記Vol.50  2022年05月

茶遊記Vol.50

 

          約束の茶・余姚仙茗

 

緑茶:余姚仙茗 浙江省寧波市余姚

外形:深緑色と鶯色。螺旋状(巻貝状)。

湯色:杏黄色。

香気:モワッとした草香。

滋味:微甘微苦。

 

 

 寧波余姚で生産される余姚仙茗。この地区の茶栽培の起源はかなり古くに遡ります。唐代の『茶経、七・茶の事』にすでに瀑布岭についての記載があり、これが余姚周辺で採れる茶葉を示しています。

 別名を瀑布茶と呼びますが、その理由には一つのある伝説からきています。それは   晋朝(265年~420年)の頃、虞洪という人が瀑布岭に入って茶を摘んでいると三頭の羊を連れた一人の道士にあいました。虞洪はその道士に連れられて自称、丹丘子と名乗る仙人に会いました。仙人は虞洪がお茶好きなのを知っており、山の中の大きな茶樹を虞洪に与えると約束します。これを聞いた虞洪は早速、その山に茶の神社を作り祀りました。すると、しばらくして虞洪は約束の大きな茶樹を見つけました。この伝説から地元では瀑布茶と呼んでいます。

 現在その大茶樹がどこにあるかは不明ですが、史料によると余姚・四明山区内は1600年前にすでに茶葉をつくっていたとあるそうですからこの大茶樹のことかもしれません。この茶樹から採れる茶葉の品質が特別だったので「仙茗」という茶名になったそうです。

 余姚は1970年代に河姆渡文化の遺跡が発見されており、およそ7000年前から5000年前とされていますが、すでに計画的な農耕を行っていたとされるところから当時の人口も多かったと考えられます。明代に茶葉はそれまでの蒸らす方法から炒める方法へ変化しました。春茶は谷雨前に加工したものが上級でした。その日に摘んだ葉はその日のうちに加工するというルールは当時のまま、現在も変わっていません。