茶遊記

中国茶の物語と評茶、茶館情報のブログ。

茶遊記Vol.70 「一杯三味の魁龙珠」

「一杯三味の魁龙珠」

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拼配绿茶 魁龙珠

江苏省扬州市富春花局制

外形:魁尖,龙井茶,珠兰花

汤色:麦芽糖黄色

香气:芳香馥郁

滋味:醇和

 

 杭州にある茶葉博物館双峰館によく行く。そこからバスや自転車で龍井館に移動することが度々あります。こじんまりとした博物館で世界の茶文化を紹介した展示を一通り観たら「富春花局」の分店でお茶をするのが定番です。

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 揚州にある本店は1885年創業ですから今年で139年、中華老字号に登録されています。古い店で人気なのは洗練された上品な味の揚州点心です。青菜が透き通る翡翠焼売、筍の食感が楽しい肉包などお茶と点心の飲茶習慣は広東と思っていたので新しい茶文化を知りました。

 茶葉博物館龍井館にある分店のメニューはいずれも国家級非物質文化遺産に登録されています。その中で唯一登録されている茶葉が1921年から富春花局で提供しているお茶、「魁龙珠」です。

 魁は太平猴魁の魁针または魁尖(安徽省)、龍は龍井茶(浙江省)、自家製珠蘭の花の香りをつけています。つまり3種のブレンドティー。魁针の控えめな花香、龍井のふくよかな清香、珠蘭の華やかな香りが揚州点心とよく合います。一杯で三省の香りを楽しめるのがこのお茶の特徴です。

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2024年2月 「春水堂 人文茶館」

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香港九龍弥敦道639号雅兰中心1楼

 

中国大陸にあるような紫砂壶や山水画などの工芸品で飾られた茶館を香港で見つけるのは難しい。代わりに、香港にはホテルのバンケットホールのような広い空間にスチームワゴンが熱々の点心を売り歩く飲茶文化があります。

 

ネイザンロードで茶館を見つけました。メニューからすると台湾風茶館のようです。

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軽く食事ができて、お茶をベースにしたソフトドリンクが楽しめて、デザートもある。そして美味しい台湾烏龍茶を洗練された茶器でサービスしてくれます。

 

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注文したのは焙火铁观音(59HK$)、岩茶に似た焙煎の香りが心地いいです。

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茶点にカリカリトーストに铁观音のアイスクリーム添えをオーダーしました。

 

お茶だけ、麺だけでも利用できてリーズナブル。こういう茶館が増えるといいですね。

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2023年1月 武庙茶軒

武庙茶軒

貴州省安順蜡染博物馆内

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貴州省の安順に行って来ました。取り壊される前の古い家屋や民族衣装が印象的でした。

 少数民族の手工芸に興味があるので博物館へ脚を運んだら館長さんが紹介してくれたのが敷地内にある茶館でした。

 

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茶芸の上手な男性が美味しい都勻毛尖を淹れてくれました。見ただけで茶葉の良さがわかります。この時期にこの鮮やかさを保っているのは保管がいいからでしょう。

 

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水は何を使っているか確認しませんでしたが、貴州省は水源管理をきちんとしていると聞きました。そのせいか観光地でも川の水が綺麗でした。

 

茶遊記Vol.58 2023年1月号「工夫して作られた政和工夫紅茶」

「工夫して作られた政和工夫紅茶」

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紅茶:政和工夫紅茶 福建省政和県

外形:黒い自然にくねりのある棒状。

湯色:赤みのあるオレンジ色

香気:薬、焙煎香

滋味:酸味、甘味、苦味がある。

 

 政和県錦屏村がこの紅茶の産地です。1874年(同治13年)遂应场村(現在の錦屏村)で高山茶葉を紅茶にしたのが始まり。加工に手間がかかるので“工夫”をつけ“遂应場仙岩茶工夫茶”という茶名にしました。

 政和地域の茶樹栽培は唐代末に先住民が種を植えたことに始まると伝わります。当時はまだ紅茶は作られていません。およそ19世紀中頃、白茶にする大白種の茶葉を使い、闽北・武夷山の正山小種の加工法を参考に改良をして誕生した紅茶です。

 政和工夫茶は坦洋工夫茶、白琳工夫茶と並んで闽红三大紅茶工夫茶と呼ばれますが、この中で一番個性的な外形は武夷岩茶のような黒いくねりのある棒状。香りも花や果物というよりは薬の香りに似ています。滋味は全体的に紅茶の甘さより白茶の苦味を残した味わいでどこかウーロン茶のようです。19世紀、英国、フランス、ロシアなどに輸出し人気を博しました。

 「茶」は福建の名刺。と喩えられるように福建省は闽北と闽南で競うように数々の銘茶を生産しています。17世紀にオランダ東インド会社が正山小種を輸入して以来、瞬く間にヨーロッパの人々の生活に浸透し新しい喫茶文化が誕生しました。正山小種や政和工夫紅茶は東洋的な香りとして人気があったのかもしれません。