茶遊記

中国茶の物語と評茶、茶館情報のブログ。

茶遊記Vol.48  2022年3月

 

茶遊記Vol.48

           仙居碧緑とのめぐり和い

 

 

緑茶:仙居碧緑 浙江省台州市仙居県

外形:深緑色に白色が少しある巻貝状。

湯色:檸檬黄色。

香気:濃厚な新緑の香り。

滋味:きりっとした苦味に甘い後味。

 

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 仙居碧緑は浙江省台州市仙居県でつくられている緑茶です。1970年代に輸出用でなく国内市場向けに生産された茶葉です。しかし、仙居県周辺はもともと古くから茶の産地として有名でした。それもそのはず、括蒼山の頂上周辺は海抜1000メートルと茶葉の発育に好条件の位置にあります。1970年代初期、ここで仙居碧緑の栽培、生産がはじまりました。

 優秀な自然条件で育った茶葉は特別な加工はせず、一芯一葉、または二葉で摘まれ、殺青、揉捻、炒干のシンプルな三工程だけです。その代わりにすべて手作業です。特徴のある外形は螺旋状に加工された深緑色です。ベルベットのような深みのある緑がとても印象的です。緑茶は酸化しやすいので保管が良くないとこの色味は維持できません。今回は昨年の明前に加工された茶葉を手に入れましたが、ほぼ10か月前の茶葉にもかかわらず、新緑の香りと光沢のある深緑色は保管がきちんとされていた証拠です。

 恒に思うのですが、評茶と実際に飲む味は違います。それはグラスの大きさ、水、茶葉の量が違うからです。仙居碧緑も評茶の一煎目は苦味を強く感じました。ただ、春という季節がら、苦い味を求めやすい体調も影響して美味しい苦味でした。二煎目ですが苦味が取れて甘さを感じました。茶湯の色も見違えるように薄くなりました(写真参照)。

 すべて手作業で大事に保管されていた茶葉は人間でいえば箱入り娘でしょうか。行ったことも聞いたこともなかった山奥で採れた茶葉ですが大切に作られていることが一杯でわかります。作り手の茶に対する姿勢とそれに応える茶の味、思いがけずいい茶葉にめぐり和えました。